蝶のような花びらがかわいらしいビオラやパンジー。秋から春にかけての花壇を明るく彩ってくれる存在です。
しかし、なぜか蕾や花が付かず、葉っぱばかり茂ったり。あるいはせっかく付いたつぼみがそのまま枯れてしまったり。そんなとき、どうすれば良いのでしょうか?
今回は、ビオラやパンジーの花が咲かない理由や、その対策について解説します。
目次
ビオラやパンジーはどんな植物?
ビオラ・パンジーのことを理解するため、簡単に説明します。
ビオラ | パンジー | |
分類 | スミレ科 スミレ属 | スミレ科 スミレ属 |
学名 | Viola Wittrockkiana | Viola Wittrockkiana |
和名 | 三色菫(サンシキスミレ) | 三色菫(サンシキスミレ) |
特徴 | 花の直径が4cm以下 | 花の直径が5cm以上 |
ビオラとパンジーは両方ともスミレ科スミレ属の園芸品種です。ご覧の通り、植物としては明確な違いがありません。園芸種としてはパンジーの方が歴史が古く、ビオラはパンジーを改良して小型になったものに付いた名前です。
ただし、近年は品種改良がめざましく、両者の間くらいの、どちらとも判断が難しい大きさのものも出回るようになりました。栽培方法も、基本的には同じです。好む土室・肥料が同じなので、一緒に植えるのも簡単。初心者には嬉しいですね。
ビオラ、葉っぱばかりになるのはなぜ?
ビオラやパンジーの苗は、通常花が付いた状態で売られています。最初の花が枯れてもシーズン内は次々と花芽が出て新しい花を咲かせるのが特徴です。
しかし、どういうわけか次の花が咲かず、いつの間にか緑の葉っぱのみの姿になってしまう場合も。そうなったらとても悲しいですね。ここではその理由について解説します。
日照不足
ビオラは日当たりの良い場所を好む植物です。日照量が足りない状況では、追肥もあまり効果を発揮せず、株全体が発育不良となります。
冬の間の日照量はもともと少なめ。鉢植えの場合は特に意識して明るい場所に置いてやりましょう。
肥料不足
買ったばかりは蕾や花が付いていたが、次第に付かなくなったという場合は、肥料切れの可能性があります。ビオラ・パンジーは開花時期が長いため大量の肥料を消費します。追肥して栄養補給してあげましょう。追肥には液肥が使いやすく即効性があるのでおすすめです。
根詰まり
ビオラやパンジーは開花しながらも成長を続け、3シーズンの間も株はぐんぐん大きくなっていきます。
そのため、いつの間にか鉢土いっぱいに根が張り、根詰まりを起こしている場合があります。根詰まりすると栄養や水分をうまく吸収できなくなるので花付きが悪くなってしまう場合も。
根詰まりの見分け方は2つあります。
- 鉢底から根が出ている
- 株のボリュームが増えると同時に葉が黄色くなってきた
根詰まりしている場合は一度植え替えをしましょう。時期は株が3月上旬がおすすめです。20℃を超えると寒冷を好むビオラ・パンジーは弱ってくるので、その後花が咲かなくなる原因になります。
掘り上げた株は、15cmくらいの間隔を取って植え直します。根がびっしり固まっている場合は、優しくほぐしてみてくださいね。植え替え後は一ヶ月ほどで回復し、また初夏まで元気に咲いてくれますよ。
春咲きの品種を選んでいる
パンジーやビオラは現在品種改良が進んだため、秋から春まで咲くものがほとんどです。しかし、品種によっては多少個性があります。
ラベルに「春咲き」と書かれているものは、冬の間は花が付かず、温かくなってきてから咲き始めます。ビオラ・パンジーが冬に咲かない、という場合はこの品種を買ってきている場合があります。冬の間も花を楽しみたい場合は、春咲き以外の品種を選ぶと良いですね。
過湿
ビオラ・パンジーは水はけの良い場所を好む植物です。過剰な水分は、株が弱る原因になってしまいます。
過湿には大きな原因が2つあります。
- 水やりの回数が多すぎる
- 花がらや不要な葉が摘まれておらず、株の中の風通しが悪い
水やりの頻度は、1~2週間に一度程度が目安ですが、毎回必ず土が乾いてきているかどうか確かめてから行いましょう。量はたっぷりと、鉢底から流れ出てくるくらい必要ですが、鉢皿にたまった水は必ず捨てます。
花がらや枯れてきた葉・多すぎる葉を摘み取ることは、株の中の風通しを良くし、カビなど病原菌の繁殖を防ぐために重要です。
開花期間中は花がら摘みも忙しくなりますが、花がら摘みは種ができるのを防ぐ働きもあります。そうすると新しい花が次々と付き、花の大きさも良くなります。やりがいに見合うだけの効果がある作業だと言えます。
肥料が合っていない
ビオラ・パンジーにはどんな肥料が合っているかご存知ですか?ビオラ・パンジーには、三大栄養素(チッ素(窒素)、リン(リン酸)、カリ(カリウム))がそれぞれ同じくらいのバランスで含まれている肥料が適しています。花つきを良くする目的でリンがもう少し多めにしても良いでしょう。
一方で、葉を茂らせる役割があるチッ素が多すぎる場合、葉っぱばかりが増えて花が付かない原因となります。葉っぱのみで花が付かない場合は、三大栄養素のバランスを考えた肥料を与えていきましょう。
複数のビオラ・パンジーの中で、一株だけ咲かない場合は?
ほとんどの株が花を付けているなか、一株だけなかなか花を付けないという場合もあります。その場合は、その株の成長が遅れているだけの可能性が高いです。
生き物には、同時期に生まれて同環境で育ったとしても、育ちの早いもの・遅いものがありますよね。植物であってもそうです。ビオラ・パンジーにもそんなタイプの子がいるんですね。
成長の遅くなるような原因が思い当たらない場合は、待つことが対策です。ほとんどの場合、時間が経てば花芽が付いてくれるはずです。
パンジーの蕾が咲かない
ここまでは、ビオラ・パンジーが葉っぱばかりになってしまうという悩みについて考えてきました。
しかし、つぼみはちゃんと付いたのに、咲かずにそのまま落ちてしまう…という悩みもあります。どうしてつぼみのまま終わってしまうのでしょうか?
急な変化が起こった?
端的に言えば、蕾が付くところまでは元気だったが、そこから急に蕾を開かせるエネルギーがなくなったということです。すると、株に何か急激な変化やダメージが起こってしまった可能性があります。
原因としては次のようなことが考えられます。
肥料のやり過ぎ
肥料不足も良くありませんが、過剰な肥料も根にダメージを与えるので良くありません。
追肥は、薄めの液肥でも最大週一回程度です。肥料過剰だとまず葉や茎がしおれてくる症状が表れます。それを肥料切れと勘違いしてさらに追肥してしまうと、株はさらに弱ってしまいます。
追肥は薄めの液肥でも最大で週一回までにしておきましょう。植え付け後しばらくは元肥がまだ効いているので追肥は少なめで様子を見るといいでしょう。
せっかくつぼみが付くところまで育ったのに、そこで成長が止まってしまっていたり、過剰な肥料で根までダメージを受けてしまい、養分や水分を吸い上げられなくなっているのかもしれません。
根がダメージを受けてしまっている場合は植え替えをしましょう。一旦肥料が過剰になっている土から掘り上げて、適正な栄養量の土に移します。根のダメージが少ない場合は、また復活してくれる可能性があります。
急に寒く・暑くなった
ビオラ・パンジーは3シーズンに渡って咲く温度適応力の高い植物ですが、あまりに急な温度変化では成長が止まることも。基本的に寒さには強いのですが、冬の間、霜の降りるような寒さの時期は、霜が当たらない場所に置いてあげましょう。
また、ビオラ・パンジーは暑さに弱い植物です。春になり、20℃を超えてくると、やはり株が弱ってきます。直射日光の強く当たる場所に置いていた場合は、少し日陰に移してやると元気を取り戻すでしょう。
スミレの仲間でさらに丈夫なおすすめ品種をご紹介
ここまでは、ビオラ・パンジーについて以下のお悩みの解決策を説明しました。
- 葉っぱばかりで花が咲かない
- 蕾が枯れてしまう
ビオラ・パンジーは一般的に丈夫で管理しやすい品種ではありますが、ここまでお読みいただいて、もっと悩みの少ない品種はないの?と思われた方もいるかもしれません。
そんな方のために、ここでは、ビオラ・パンジーよりももっと丈夫で夏越しもOK、しかも多年草、という嬉しいスミレ属の園芸品種を紹介します。
可憐な姿のスミレ属、ビオラ・ラブラドリカ
今回おすすめする品種は「ビオラ・ラブラドリカ」です。
分類 | スミレ科 スミレ属 |
学名 | Viola labradorica |
別名 | ラブラドール・バイオレット、アルパイン・バイオレット |
特徴 | 青または紫色の花、黒みのある重厚感ある葉色 |
ビオラ・ラブラドリカは野生のスミレに近い可憐な姿が特徴の植物です。葉っぱは黒みがかったシックな色合いで、花がないときでも庭を引き立ててくれる美しさがあります。
原産国はグリーンランド・カナダ・北アメリカなどの寒い地帯で、マイナス35℃までの非常に強い耐寒性を持っています。さらに、耐暑性もあり、強い直射日光を避ければ枯れることなく夏越し可能です。
庭に地植えしておくとそのままゆるやかに数が増えていきます。背丈が15cm程度と低いこともあり、グラウンドカバーにもおすすめです。ただし、こぼれ種が飛んで思わぬところに生える場合もあるので、きちんと花がら摘みをして種の飛散を防ぎましょう。
まとめ
今回は、ビオラ・パンジーについてのお悩みの原因・解決策を解説しました。
- 葉っぱばかり茂って花がつかない
- 蕾が咲かずに枯れる
- もっと簡単に育つスミレはある?
ビオラ・パンジーは基本的に育てやすい品種ですが、間違った育て方をすると花が付かなかったり、最悪の場合枯らしてしまうこともありました。
ビオラ・パンジーは様々な花色や大きさがありさまざまな楽しみ方ができる植物です。安価で手に入れられ初心者でも取り組みやすいので、ぜひこの機会に挑戦してみてくださいね。