料理のスパイスやアロマオイルの原料としてもなじみが深い「ハーブ」。
私たちの生活の中にしっかりと浸透しているハーブは、実は家庭菜園初心者でも簡単に育てられる植物です。
では、ハーブの中でも利用しやすくて、特に育てやすい植物とはいったいどれなのでしょうか?
そこで今回の記事では、家庭菜園を楽しむ人向けに
- そもそもハーブとは?
- 育てやすいハーブの種類と育て方
- 収穫したハーブの利用方法
について特集していきます。
目次
初心者でも簡単に育てられる植物「ハーブ」とは?
ハーブはラテン語で「緑の草」という意味の「Herba(ヘルバ」が語源です。ハーブは古くから人々の近くにあり利用されてきました。
紀元前のエジプトでは、ハーブを聖なる植物として大切にあつかっていたという記録も残っています。古代ギリシャではハーブを使った病気の治療法が研究されていたことがわかっています。
ハーブとは、その花や葉、種子や根などがさまざまな生活に役立つ植物のことです。個性的な香りを持つものが多いことから、日本では「香草」と訳されています。
食用に適したハーブの仲間は、花、茎、葉を利用するものを「ハーブ」、実などを利用するものは「スパイス」と呼ばれます。
バジルやイタリアンパセリなど、葉を料理に使うものはハーブ、胡椒やシナモンなど、実や樹皮を利用するものはスパイスに分類されます。
人の生活に役立ち、豊かなものにしてくれるハーブは、もともと自生していた植物です。
難しい栽培テクニックを必要とせず、育てやすい種類の多いのが特徴なハーブを家庭菜園で育ててみませんか。
家庭菜園におすすめのハーブ7選
香り豊かなハーブはプランターや庭の家庭菜園で簡単に育てられます。
日当たりのよい窓辺があれば、小さな鉢植えからでも始められるハーブ栽培。
ハーブは毎日の暮らしの中に、グリーンの美しい色彩と爽やかな香りをもたらしてくれます。
バジル
バジルとは
バジルは大葉と同じシソ科の植物です。原産地は熱帯アジアやインドとされています。
ギリシャ語の王者を意味する「バジレウス」が語源ともいわれるバジルの芳香は、その名の通り素晴らしいもの。
パスタやピザなどイタリア料理やフレンチには欠かせないハーブです。
日本でもおなじみのバジルは、食品売り場でも見かけるようになりましたね。
初夏から夏にかけて旬をむかえるバジルは、乾燥させたり、ジェノベーゼソースにしたりすることで
保存食としても重宝されています。
栄養価も高く、抗酸化作用があるβカロテンやビタミンEやC、ミネラル分も豊富に含んでいます。
また、バジルの香りにふくまれる成分は不安感をおさえてリラックスさせてくれる働きがありますよ。
バジルの育て方ポイント
バジルを種から育てるときには2つポイントがあります。
- バジルの発芽には光が必要
- バジルは寒さに弱い
まず、バジルの種が発芽するためには光が必要です。
そのため、一般的な種まきとはちがって、種をまいた後の覆土はおこないません。
種まきの適期はゴールデンウィークのころです。庭や畑の家庭菜園で栽培する場合は、晩霜の心配がなくなってからまくようにしましょう。
バジルの苗は4月上旬から出回りますが、露地栽培用の苗はゴールデンウィーク以降に購入するのがおすすめです。
バジルは太陽が大好き!日当たりと風通しがよい場所と肥よくな用土を準備しましょう。
水切れと肥料切れに注意して、成長期には追肥をおこなうとグングン育ってくれます。
バジルの葉をたくさん収穫するには「摘芯」という作業が重要です。
摘芯とは成長していく苗の先を切って脇から生えてくる側枝を伸ばすことです。
また、バジルを長く収穫したいときには、花穂が伸びてきたら摘むようにします。
花が咲くと栄養は種子をつけるほうに回ってしまい、成長しなくなってしまいます。
寒さに弱いバジルは日本では一年草です。収穫した葉はドライやソースにして保存するのがおすすめです。
イタリアンパセリ
イタリアンパセリとは
イタリアンパセリはセリ科の2年草です。原産地はヨーロッパ地中海沿岸とされています。
一般的なパセリとの違いは、葉が縮れていなくて平らな形をしているところです。
風味はパセリとくらべると苦みが少なくて食感がやわらかい印象です。
一方で、独特な香りはパセリより強く、スープやサラダ、ドレッシングに加えてもおいしくいただけます。
イタリアンパセリ特有の香りは食欲をそそり、疲労回復の効果があります。
また栄養価も高く、ビタミンC、E、Kの含有量は野菜の中でトップクラスです。
こんなに栄養価が高いイタリアンパセリを身近な家庭菜園で育てて、フレッシュなうちに味わいましょう。
イタリアンパセリの育て方ポイント
セリ科のイタリアンパセリを上手に育てるポイントは2つあります。
- 直射日光が苦手
- 根が傷みやすいので植え替えは避ける
イタリアンパセリの生育の適温は少し涼しめの15~20℃です。そのため、真夏の日光や冬の寒さは苦手です。
種まきは暑くなりすぎない、3~5月と9~10月におこなうのがおすすめ。
直射日光が苦手なので鉢で育てるのが管理しやすいですね。
明るい窓辺にスペースがあれば、家の中で育てて料理のときに摘んで利用すると便利です。
イタリアンパセリは根が傷みやすい植物です。種をまいたら同じ容器や場所で育てるように注意して、
植え替えないようにしましょう。
水はけが良くて肥よくな用土を用意して、水のやりすぎに気をつけるのが育て方のポイントです。
イタリアンパセリは葉を収穫して利用したいハーブです。ですから、追肥は窒素成分が多い肥料を与えるようにします。
気をつけたい病気はうどんこ病です。水はけや風通しに気をつけて、葉の表面が白っぽくなっていないか観察しましょう。
オレガノ
オレガノとは
オレガノはシソ科の多年草で地中海沿岸が原産地です。
別名はハナハッカ、ワイルドマジョラムと呼ばれることもあります。
耐寒性が強く日本でも越冬できる植物です。
オレガノは春になると成長が旺盛になって、茎の先端にきれいな淡い赤色の小さな花をたくさんつけます。
ドライフラワーにすると、爽やかな香りが強くなってよりいっそう楽しめます。
肉料理の香りづけやトマト料理との相性がよく、家庭菜園から摘んできたフレッシュなオレガノを料理に使うのはとてもおすすめです。
オレガノの育て方ポイント
オレガノは日当たりと水はけの良さをを好みますが、高温多湿は苦手です。
ワイルドマジョラムと呼ばれるくらい、肥料が少なくてやせた土壌でも育ちます。
乾燥気味に育てるのがオレガノの育て方のポイントです。
水やりは庭や畑の家庭菜園では必要ありません。
鉢植えの場合は表面が乾いてからたっぷりと与えて、梅雨時期は軒下で管理するようにしましょう。
オレガノに肥料を与えすぎると香りがうすくなるといわれています。
また、ハーブの中でも病害虫にとても強いので、家庭菜園初心者におすすめの植物です。
ローズマリー
ローズマリーとは
ローズマリーは常緑の低木で、地中海沿岸が原産地です。
葉や枝に触れるだけで爽やかで清涼感のある香りを楽しめますよ。
ローズマリーの香りには、頭をすっきりさせて集中力を高める作用があります。
品種も豊富で、背が高くのびる立ち性や、地面近くで這うように成長するほふく性など
育てる環境にあわせて選べます。
ローズマリーは常緑樹。一年中いつでも香りを楽しめる、庭やベランダの家庭菜園に一つあると便利なハーブです。
用途も、料理の風味付けから香りを楽しむ入浴剤としてまで幅広く楽しめるのが特徴です。
ローズマリーの育て方ポイント
ローズマリーはとても丈夫で育てやすいハーブの代表です。
もともと乾燥した肥料分の少ない土地に自生していた植物です。
ローズマリーの育て方のポイントは、日当たりに気をつけることだけ。
地植えにする場合は日陰を避けて植えるようにしましょう。
家庭菜園では種から育てるのは時間がかかるため、苗を購入するのが一般的です。
また、ローズマリーは挿し木で簡単に増やせます。
成長期の枝の先端を約5cm清潔なハサミで切ります。
その枝をコップに挿しておくと1~2週間で発根するので培養土に植えて増やしていきましょう。
ラベンダー
ラベンダーとは
ラベンダーはシソ科の半耐寒性の低木です。原産地は地中海沿岸からアフリカ北部とされています。
鮮やかな紫色とリラックス効果のある香りが人気のハーブですね。
ラベンダーは非常にたくさん品種があります。
香りを楽しみたい場合はイングリッシュラベンダーが断然おすすめです。
花は紫のグラデーションを楽しめる、豪華なフレンチラベンダーが好まれます。
ラベンダーの主な開花期は春から初夏です。
蒸留した精油(エッセンシャルオイル)は香料や香水の原料として古くから利用されています。
ラベンダーの育て方ポイント
ラベンダーを家庭菜園で育てる場合には夏越しがポイントになります。
梅雨前に株をすっきりさせる剪定をおこなって、茎が混み合わないようにしましょう。
そうすることで蒸れて株が傷むことを防ぎ、ラベンダーの負担を減らせます。
ラベンダーは種から育てると時間がかかるため、家庭菜園初心者は苗から育てるのがおすすめです。
日当たりと風通しに注意して、乾燥気味に育てると大きな株に育ちます。
ラベンダーは追肥や病害虫の心配がなく、家庭菜園初心者におすすめのハーブです。
花や茎からの芳香をベランダや庭の家庭菜園で思い切り楽しんでください。
ペパーミント
ペパーミントとは
ペパーミントはシソ科の多年草です。原産地は世界の温帯のほとんどの地域とされています。
ミント類は世界中で自然交配が進んでおりさまざまな品種があります。
その中でも、園芸品種としてはペパーミントとスペアミントが代表的ですね。
とても古くから薬草や薬味として利用されてきた、すっきりとした香りには防虫効果もあります。
ペパーミントは歯磨き粉やガムでもおなじみのメントールの香りがとても強い品種です。
ペパーミントの育て方ポイント
ペパーミントの最大の特徴は繁殖力がとても旺盛なこと。
地下茎を伸ばして勝手に増えていってしまうのが、育て方の注意点としてあげられるくらいです。
ですから、他のハーブや植物との混植は避けて、ペパーミントだけを鉢やプランターで管理するようにしましょう。
肥料や病害虫の心配はまったくありません。
家庭菜園初心者がペパーミントを育てる場合は、種をまくよりも苗を一つ購入するのがおすすめです。
春から夏にかけて清楚な白い花を咲かせるペパーミント。
一年中収穫できますが、開花の時期がもっとも芳香が強くなります。
カモミール
カモミールとは
カモミールはキク科の植物です。原産地は地中海沿岸とされています。
カモミールには大きく分けて、一年草のジャーマンカモミールと多年草のローマンカモミールがあります。
小さくて可憐な白い花を咲かせるカモミールは、リンゴのような甘い香りが人気です。
カモミールの花を乾燥させてお湯を注ぐと、おいしくて心を落ち着けるハーブティーとして楽しめます。
ハーブティーとして利用したい場合は、ジャーマンカモミールのほうが適しています。
カモミールの育て方ポイント
カモミールは、前の年につけた種がこぼれて増えていくほど繁殖力が高いハーブです。
育て方のポイントは、高温多湿には弱いので風通しがよく乾燥気味の場所に植え付けることです。
また、肥料が多すぎるのを嫌う植物なので追肥は与えないようにしましょう。
ジャーマンカモミールは初夏になると枯れる一年草、多年草のローマンカモミールも夏の間は成長が止まります。
ジャーマンカモミールは種をまいて育てます。
ローマンカモミールは夏以外の時期に株分けで簡単に増やせますよ。
大きくなったローマンカモミールの株は、掘り起こして根を清潔なハサミで切り分けます。
そのまま植え付けるだけで増やせるおすすめの丈夫なハーブです。
収穫したハーブの活用方法
料理に使ってみよう
ハーブは育てる楽しみと、収穫してから利用する楽しみがあります。
料理に使う例としては
- バジルのジェノベーゼソース
- オレガノやローズマリーは魚や肉料理の風味づけに
- イタリアンパセリは生のままサラダに
- カモミールティーでリラックス
などがあげられます。
フレッシュなイタリアンパセリは、やわらかい茎と葉を摘んでサラダやスープに加えましょう。
オレガノやローズマリーは枝を切って乾燥させて使うとさらに香りが強くなります。
ジャーマンカモミールの花を摘んで乾燥させお湯を注ぐと、眠れないときにおすすめのカモミールティーが楽しめます。
農薬の心配がない家庭菜園のハーブは安心して料理に使えますね。
香りを楽しんでみよう
庭やプランターの家庭菜園にハーブコーナーを作ってみませんか。
お気に入りのハーブに囲まれた家庭菜園を手入れしていると爽やかな香りに包まれます。
それだけで、緊張がほぐれてリラックスできますね。
また、数種類のハーブを組み合わせて布の袋やお茶パックに入れると、あっという間に入浴剤ができ上がります。
天然のハーバルバスは美容や健康にもよく、何よりも心身のリラクゼーション効果が人気ですね。
また、乾燥させたハーブを布の袋に入れてクローゼットに吊るしたり、引き出しに入れたりすると天然の防虫剤になります。
家庭菜園で簡単にハーブを育ててみよう!
ハーブを家庭菜園で上手に育てられるのか心配だった人も、今回の記事を読んでハーブは丈夫な植物だということがよくわかったのではないでしょうか。
育てやすくて日常生活で利用できるハーブは、家庭菜園にこそおすすめの植物です。
お好みの香りのハーブを家庭菜園で育てると、毎日のように触れ合って楽しめます。
簡単に育てられるハーブをぜひ家庭菜園に仲間入りさせてください!