古くから親しまれ、皆さんにも馴染み深い花、「菊」の挿し木方法をご紹介します。
お盆や菊人形、菊花展など目にする機会が多い菊の花。種類も豊富で私たちの目を楽しませてくれますね。意外と強くて丈夫な花なので、注意点さえ守れば初心者の方でも簡単にキレイな花を咲かすことができますよ。
目次
菊の育て方と摘芯の方法
まずは菊の基本的な育て方と、摘芯の方法や理由について解説していきます。
土の準備
どんな植物でも、土が良くないと元気に育ってくれません。鉢やプランターで育てる場合は、ホームセンターなどで売っている草花用培養土や菊専用の土を使うのがいいでしょう。
地植えで育てる場合は、水はけの良い土地に2〜3割の腐葉土を混ぜるのが好ましいです。腐葉土を混ぜることで、根の張りやすい良質な土になります。
水やり
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、底から水が流れるまでたっぷりと与えます。春と秋は1日1回の水やりで十分です。
夏は土が乾きやすいので、涼しい朝か夕方に水を与えてください。冬は土の乾きが遅くなりますが、同じように土の表面が乾いたら水を与えましょう。水を与えすぎると、根腐れを起こしやすくなるので、土の表面が乾いた時に与えるのがポイントです。
地植えの場合、植え付け直後は水を切らさないよう水を与えますが、それ以外は基本的に水やりは必要ありません。真夏の雨の少ない時期に、葉がしおれてる時は涼しい時間帯に水を与えてください。
肥料について
花つきを良くするために、定期的に肥料を与えましょう。基本的に3〜10月の間に月1回程度。緩効性の化成肥料を規定量与えるだけで大丈夫です。
摘芯の方法と理由
摘芯は、植物や野菜にたくさんの花を咲かせたり、株のボリュームを増やすために行います。
菊の場合だと、生育中の芽の先端を摘み取り、それ以上の成長を止めてしまいます。そうすることで、成長するための力を脇芽に使います。その結果、丈夫で強い茎になり、枝数も増えてたくさんの花を咲かせることができます。
摘芯の方法は、先端の芽の部分を手で摘み取ればOKです。摘芯後に伸びてきた枝が多すぎるようなら、細い枝は切り取って構いません。最終的に1株あたりの枝が、3〜4本にするのが良いでしょう。
菊の花が終わったらどうすればいい?
大切に育てた菊の花が終わったあとは、どうすればいいのでしょうか?菊は多年草なので、一度枯れても次の年には、また花を咲かせます。
9月〜11月に咲く品種は、花が枯れたら根本から3〜5cmほど残して切ってしまいましょう。そうする事によって、地中から出ている芽(これを冬至芽と言います。)が出やすくなります。
この芽を株分けして植え直し、春まで苗として育てましょう。しかし菊の根は弱りやすく、樹勢が落ちて、花付きの悪くなる可能性があります。それを防ぐために、ある程度育ったら、その苗を挿し芽として育てる方法が良いでしょう。
一般的な挿し木の方法
- 5〜6月ごろに新芽の先端を、10センチほど(葉を7〜8枚残す程度)で切り、切った新芽の下の葉3枚を摘んで挿し木として使います。
- 水を吸いやすくするために、切り口をカッターなどで斜めに切ってください。その後、1時間くらい切り口を水につけておきます。
- 挿し木をする前にたっぷり水を与えてから、2〜3センチの深さに挿し、指でしっかり土を抑えます。
- 挿し木をした後は、日陰に移動させるか、新聞紙をかけるなどして直射日光を当てないようにしましょう。
- 1週間ほどしたら、少しずつ日光にあててください。
- 水のやりすぎは厳禁で、少し乾かし気味に管理します。
- 挿し木用の土は無菌で無肥料、水はけが良い土ならなんでもOKです。
- 挿し木用土や鹿沼土、バーミキュライトなどを使うのが一般的です。
- 容器もプランターや鉢植えなど、水が抜けるものならこだわりはありません。
夏菊の挿し木
10月〜11月が挿し木の時期になります。根をしっかりと張らせて冬越しさせたいので、寒くなる前に終わらせましょう。
暖かくなると、周りから新芽(冬至芽)が出てくるので、この芽を成長させて花を咲かせます。その後は、摘芯をして丈夫な株にしてあげましょう。
大輪菊の挿し木
大きな花が見応えのある、大輪菊。大輪と言っても、通常の挿し木と同じで問題ありません。挿す時期の標準は5月頃。さす時期が早いと草丈が大きくなりやすいので、注意が必要です。比較的害虫がよりやすいので、見つけたら速やかに駆除しましょう。
菊の株分け
菊は挿し木以外にも株を分けて増やす方法もあります。挿し木よりも手間がかからないため、こちらの方法で育てる方も多いです。
株分けの時期
地域にもよりますが、暖かくなってくる3〜4月に株分けをしましょう。
株の分け方
株の外側から根っこを傷つけないように、10センチほど掘り起こします。土をある程度落として、2〜4つに手で割くように分けてください。元気そうな冬至芽を切って、別の場所に植え替えましょう。
冬至芽の選び方
根っこ近くの冬至芽よりも、外側の若い芽の方が元気に育ちやすいです。
菊栽培カレンダー
夏咲き
挿し木 | 10〜11月 |
摘芯 | 5月 |
開花 | 8月 |
株分け | 3〜4月 |
秋咲き
挿し木 | 5〜6月 |
摘芯 | 7月 |
開花 | 11月 |
株分け | 3〜4月 |
夏菊の育て方
夏菊は夏に花が咲く早咲きの品種のことを指します。最大の特徴は、日の長さに関係なく、温度によって花を咲かせる性質です。5〜6月咲きは最低気温10℃以上、7〜8月咲きは15℃以上の気温で花を咲かせます。
栽培環境
雨に当たると花が傷んでしまうので、雨を避けられる場所が好ましいです。真夏の直射日光は苦手なので、半日陰の状態にできるなど対策を取る必要もあります。
水やり
通常の菊の水やりとあまり変わりません。水のやりすぎに注意しますが、開花前後に水分が足りないと、花つきが悪くなってしまうので気をつけましょう。
摘芯
こちらも通常の菊と変わりませんが、お盆に咲かせる品種は5〜6月までに行いましょう。
夏菊を育てる注意点は、以下のことに気をつければ難しいことはありません。
- 雨に当てないこと
- 水のやりすぎと、開花前後の水管理
寒菊の挿し木
寒菊は開花期が遅いので背が高くなります。そのため、挿し芽時期を遅くして、栽培期間が短くなるようにします。だいたい6月初めを目安に挿し木をするのが良いでしょう。
ただし、一般家庭で寒菊の挿し木は、霜などを防がなければいけないので、難易度が高くなります。
菊の植えっぱなしと切り戻し
菊は植えたままでもそこまで問題はありませんが、どんどん成長していくので、草が茂って見た目も悪くなりますし、倒れてしまったりとあまりおすすめはしません。
そのため、成長中は摘芯作業、花が咲き終わったら切り戻し作業を行いましょう。手間をかけた分、美しい花を楽しめますし、なにより愛着が湧いて、ますます菊の花が好きになるでしょう。
切り戻しとは
伸びすぎた茎や枝を切って、形を整えてあげることです。切り戻しの効果は、樹木の大きさや樹型を整えるほか、新芽や花の成長を促したり、風通しを良くして病気や虫を防ぐ目的もあります。
秋に咲く花は、5月末から6月初めにかけて、株元から2〜3センチの部分をバッサリ切り戻しを行いましょう。これを「皐月の切り戻し」と呼びます。
しかし連作障害や老化で、少しづつ元気がなくなってくるので、5年ほど育てたら株分けをした方がいいでしょう。根を整理して植え直すだけでも一気に若返ります。
挿し木栽培で気を付けたい虫や病気
丈夫で育てやすい菊でも、病気や虫はつきものです。ここでは病害虫やその対処法を書いていきます。
かかりやすい病気
うどんこ病や灰色かび病。カビが原因の病気です。葉や茎に白い斑点が現れて弱ってしまい、花つきや生育が悪くなり、枯れる原因にもなります。
症状を見つけたら、異常のある葉や枝を取り除き、感染が広がらないようにしましょう。対策は水はけと風通しの良い環境を作ることで防げます。
発生しやすい虫
ハダニやアブラムシなどが発生しやすいです。ハダニは乾燥した時期に発生しやすく、アブラムシは春先から夏にかけて注意が必要です。
見つけた場合は、繁殖力が高いので専用の薬剤を散布してあげましょう。
ただし、同じ薬剤を使い続けると、害虫が耐性を持ち、効かなくなる場合があります。被害が続く時は、違う系統の薬剤をローテーションで使いましょう。
まとめ
今回は、菊の挿し木についてまとめました。花の中でも種類が多く、色や形、大きさなど自分の好みに合わせたものを見つけるのも楽しいですよね。
菊の挿し木は、草花の中でも成功率が極めて高いので、初心者の方にもチャレンジしやすいかと思います。今回ご紹介した方法を参考に、ぜひお試しください!!