ラベンダーといえばハーブの定番として有名ですね。
きれいな紫の花やその独特な香りを活かしてポプリやドライフラワーにリースづくり、またはハーブティーとして飲むなど多様な使い方ができます。ぜひ自宅で気軽に増やしてみませんか。
この記事では、ラベンダーの挿し木を切る場所と失敗しないためのポイントをお伝えします。
ラベンダーの増やし方
ラベンダーの増やし方には「挿し木」、「種まき」、「株分け」の3つの方法があります。
「挿し木」は元々あるラベンダーの茎を剪定し、土に挿して発根させ、新しい苗として育てる方法です。
「株分け」は育てているラベンダーを植え替えするときに、手で割くように分けて増やす方法です。「株分け」は割いたときに傷がついてしまうと、そこから土壌の菌に感染したり、腐ってしまったりすることがあります。
また種から育てた場合、花が咲くまで2~3年かかるといわれています。
「挿し木」は種や株を購入する必要もなく、挿し木を行った翌年には小さいながらに花を咲かせることができます。そのため、気軽に早く増やすなら断然「挿し木」がオススメです。
ラベンダーの種類
挿し木を始める前に、ラベンダーの性質と種類を軽くおさえておきましょう。
ラベンダーは草花ではなく、低木です。シソ科の多年植物で、原産地は中近東から地中海沿岸で)、高温多湿に弱い植物です。
ラベンダーは大きく6つの系統に分けられ、以下のような特徴をもっています。
アングスティフォリア系(イングリッシュラベンダー)
ラベンダーといえば、一般的にアングスティフォリア系を指すことが多いです。香りが強く高温多湿に弱いため、毎年花を咲かせるのは難しく、寒冷地向けです。
ラバンディン系
暑さと寒さの両方に強く、株が大きく成長するため、初心者にオススメです。花だけでなく、葉にも香りがあるのが特徴です。
ストエカス系(別名フレンチラベンダー)
香りはあまり強くありませんが、地植えで育てても大丈夫なほど暑さに強く、初心者にオススメです。アングスティフォリア系とは逆で寒さに弱い品種です。
デンタータ系
香りが強く暑さに強いので、暖かい地域でも庭植えができます。
プテロストエカス系(別名「レースラベンダー)
数多く流通していますが、高温や寒さにも弱いデリケートな品種です。
スパイカ系(スパイクラベンダー)
こちらも高温多湿に弱く、寒さにも非常に弱い品種です。10度くらいまでしか耐えられないため、寒冷地でなくても冬は室内に取り込む必要があります。
挿し木を行う前に知っておくべきこと
ラベンダーの基本的な特徴を理解したところで、次は挿し木を行うための計画と準備を始めましょう。
オススメの挿し木の時期は?
ラベンダーが育つのに最適な温度は15〜20度なので、昼と夜の温度差が少ない4~5月、あるいは9月~10月に挿し木を行うのがオススメです。
梅雨の時期は、ラベンダーが花を咲かせるのに一番エネルギーを使う時なので、この時期に挿し木を行うのは避けましょう。
挿し木をする際に必要なもの
- 新しい鉢や容器
- 清潔な園芸用のハサミ
- 発根促進剤
- 水と水を入れる容器
- 挿し木用の土
土は、無菌の挿し木用の土を使うことが重要です。ハーブ用の土には堆肥や腐葉土などの有機物が配合されているため、挿し木の切り口から微生物や雑菌が入って苗が弱ったり、病気になったりすることがあります。
水分の持ちがよく、肥料分が含まれていないバーミキュライトや挿し穂が安定しやすい小粒の赤玉土を使うのがオススメです。
挿し木の行い方
次に挿し木についての大まかな流れを把握しておきましょう。
手順
- 親株から挿し木用の枝を選び、剪定する
- 挿し木用の土に挿す
- 水やりしながら根が出るまで待つ
- 直射日光の当たらない日陰で管理する
- 1か月ほどたって根が生えたら新しい苗として植え直す
それではここから具体的な作業を説明していきます。
どんな挿し木を選べばいい?
挿し木は、親株の性質や遺伝をそのまま受け継いで成長します。元気な親株を選べば、丈夫できれいな株を増やすことができます。
できるだけ緑色が濃く、太い茎を選ぶようにしましょう。また花芽がついていない枝を選び、必要以上に伸びてしまった茎を選ぶのは避けましょう。
挿し木のどこを剪定すればいい?
木質化したところの枝は芽が出にくいため、園芸用の清潔なハサミを使って新芽の部分を切りましょう。できるだけ花やつぼみのない枝を選び、新芽10センチぐらいのところの茎を斜めにカットします(これを「挿し穂」と呼びます)。
挿し穂が全て発根するとは限らないので、5本ぐらいカットしておきましょう。
また挿し穂の切り口が小さいと水を吸いにくいため、ハサミで切った後にさらにカッターを使ってきれいに斜めに切ると、発根する確率も高くなります。また土に埋めるため、下半分の葉っぱを落としましょう。
挿し木を土に挿す
水の入ったコップに挿し穂を入れ、1時間ほど水に浸しましょう。
適量の発根促進剤をコップに溶かしておくと、より発根する確率が高くなります。(あるいは土に挿す前に、切り口に発根促進剤を塗るのでも構いません)
1時間ほど浸したら、挿し木用の土に挿します。この土には事前に水をたっぷり含ませておいてください。
鉢に挿し木をする場合は、鉢の底にネットと鉢底石を敷いてから土を入れます。
割り箸などの細い棒を使って土に穴を開け、そこに挿し穂を植えます。隙間に土を埋め、軽く手で押さえましょう。
水やりをして、明るい日陰で管理
挿し穂を植えたら、たっぷり水をやりましょう。
発根するまでには1か月ほどかかるので、明るい日陰で管理するようにしてください。土がしっとりした状態を保つために、表土が乾いたら水やりを行います。
根が生えてきたら、栄養を吸い上げることができるようになるので、ここから肥料入りの培養土を使って鉢上げ、あるいは地植えを行いましょう。
挿し木 鉢以外の栽培方法
挿し木というと鉢を使うことが多いですが、ここでは違った容器を使った栽培方法を紹介します。ぜひ興味のある方法を試してみてください。
ペットボトル
必要なもの
- 挿し木用の土
- 水苔(またはキッチンペーパー)
- 剪定バサミ
- カッター
手順
- カッターを使ってペットボトルのくぼみがあるところに切り込みを入れ、ハサミを使って輪切りにする(手を切らないように、切り口にセロテープを貼ると安全です)
- ペットボトルの下部の中に上部を逆にして立て、飲み口のところに水でふやかした水苔(またはキッチンペーパー1枚)を詰め込む
- 上部に土を入れ、全体的に水をしみこませたら、挿し穂を土に挿す
あとは鉢植えと同じように、1か月ほど発根するまで日陰の場所に置きます。
卵パック
必要なもの
- 挿し木用の土
- 卵パックに穴を開けるための道具(桐、カッター、安全ピン、ハサミなど)
- 受け皿
手順
- 卵パックの底に穴を開ける
- 発根促進剤を挿し穂の根元に塗り、卵パックに挿し木用の土を入れる
- 挿し穂を土に挿す
- 土に水をやり、テープやホチキスなどを使ってフタをしてミニ温室状態にする
受け皿に水を張り、その上に卵パックを載せると、穴を空けたところから、土が水を吸ってくれます。あとはペットボトルと同様、1か月ほど日陰の場所に置きます。
水挿し
水の入った器に入れて、挿し木を行うことは不可能ではありませんが、水が腐って挿し穂も腐るケースが多いようです。土に入れて栽培するほうがに発根率が高いため、水挿しはあまりオススメできません。
また発根した場合も、その後に土に植えないと次第に腐ってしまいます。もし挑戦するのであれば、葉に水が触れないように水位を下げて挿してみるといいかもしれません。
挿し木の失敗の原因は?
手軽に増やせる挿し木ですが、時に根が生えてこなかったり、枯れてしまったりすることがあります。
ただその原因を事前に知っておけば、失敗する確率を減らすことができます。失敗の主な原因として挙げられるのは以下の4つです。
- 水やり
- 切り方の問題
- 発根促進剤
- 鉢と用土が違っていた
水やり
失敗する原因で最も多いのが水やりです。根がしっかり生えるまでは、土を乾燥させないことが大事です。土の表面が乾いてきたら、水をあげましょう。
ただ水を多くあげすぎても枯れてしまうので、霧吹きで挿し穂全体に吹きかけるのもオススメです。また根が生えた後は、土を一度乾燥させてから水やりを行ってください。
切り方の問題
切る場所が悪いと根が出にくくなることがあるので、切る場所には気をつけましょう。挿し穂にするのは木質化した部分ではなく、若い芽が出ている部分を切って挿すようにしてください。
また挿し穂の切り口が小さいと水を吸いにくいので、ハサミで切った後にさらにカッターできれいに斜めに切ると、断面積が広がって根が出やすくなります。
鉢と用土が違っていた
使う鉢が大きすぎたり小さすぎたりすると、水分が足りなかったり、多すぎたりして失敗することがあります。
セルトレイは挿し穂に対してちょうどいい大きさなので、水分量を間違えることを防ぐことができます。
また土は挿し木用の土を選ぶことが大事です。肥料や堆肥が含まれていないものを選ぶようにしてください。
まとめ
ラベンダーの挿し木の行い方、異なる栽培方法、失敗をしないためのポイントを紹介しました。ここまで読んでいただけたら、失敗する確率はさらにぐっと低くなるはずです。
年に2回ある挿し木の機会をぜひ使って、増やす楽しみ、そして収穫後の楽しみを存分に味わってください。