プランターで植物を育てた後の土の処理方法を知っていますか?植物を育ててみたけど、そのあとは繰り返し使っていいのか、捨てたほうがいいのか家庭菜園を始めたばかりだと悩んでしまいますよね。
そのまま使いまわしていると、害虫が発生したり、植物がうまく育たたないことがよくあります。しかし、新しい土を買う必要はありません。
この記事では、プランターで植物を育てた後の土を消毒・再利用して、捨てずに次の栽培に活かす方法を紹介します。
目次
プランターの土の使い回しはよくないの?
結論として、植物を育てた後の土の使い回しは悪いことではありません。しかし、古い土を使うと、次に植物を植えようと思ってもうまく育たないことがあります。
ではなぜ、うまく育たないのでしょうか?良い土とされる基本的な条件を見てみましょう。植物がうまく育ってくれるよい土の基本的な条件は5つあります。
- 水はけと通気性がよい
- 水もちがよい
- ちょうどよい養分を含む
- 害虫・病原菌が少ない
- 酸度が適正かどうか
良い土の基本的な条件を知ったら、次は古い土をそのまま使うときの問題点について、見てみましょう。
プランターの古い土をそのまま使う時の問題点
古い土と新しい土は目で見ただけでは区別がつきませんが、植物が育つための環境は大きく違っています。おいしい野菜を作りたい人、収穫できる量を増やしたい人は、まず土づくりに注目しましょう。
それでは、一度植物を育てたプランターの土を、そのまま次の植物の栽培に使いまわしてしまうことで起こる問題をくわしく見ていきましょう。
土にゴミが混ざっている
一度植物を育てたプランターの土の中には、育てていた植物の根が残っています。根が残ったままだと、次に育てる植物が根を張るのに邪魔になってしまいうまく育ちません。とくに、球根や宿根草(しゅっこんそう)を育てていた場合、残っている根が成長するので必ず取り除きましょう。
害虫や病原菌がいる
以前に植えた植物を好む害虫や病原菌などが発生している場合があります。そのため、古い土は新しい土と比べ、害虫や病原菌が発生しやすい環境となっています。
害虫に新しく育てようとしている植物の根を食い荒らされたり、病原菌に感染し、植物がうまく育たない可能性があります。うまく植物を育てるためには、害虫や病原菌の少ない土壌環境を作る必要があるのです。
水はけと通気性が悪い
植物がよく育つ土は、土の粒と粒の間に小さなすき間があるのでフカフカした土になっています。このすき間が、水はけと通気性を保ってくれているのです。
一方、植物を育てた後の土は、土の粒子が細かくなりすぎて硬くなってしまい、土の粒と粒のすき間が少なくなっています。
プランターの硬くなった土を取り出して、有機物を混ぜることで微生物の働きが活発になります。微生物が繁殖することで徐々に隙間が生まれ、フカフカした土になっていきます。
植物に必要な養分が不足している
植物を育てた後の土は、すでに養分が吸収されて、栄養がすくない状態です。
新しい植物を育てるためには、土に養分を補給する必要があります。肥料を入れて、栄養を補給してあげることで、もう一度植物がすくすく育つ土を作ることができます。
酸度が適正ではない
雨が多いと、土の中のカルシウム分やマグネシウムが流れ出し、酸性に傾いてしまいます。酸度を調整せずに野菜や植物を育てると、根を傷める場合があり、結果的に根の働きや養分の吸収が悪くなり、育ちにくくなってしまいます。
連作障害が出やすい
古い土では、連作障害(同じ科の植物を繰り返し育てることで生育不良が起こること)が起きる可能性があります。同じプランターで違う種類の植物を育てているつもりでも、同じ科の植物を続けて育ててしまっている場合があります。
同じ科の植物を続けて育てることによって、その科の植物を好む病原菌が繁殖し、病気になりやすくなってしまいます。それ以外にも、害虫が増えたり、土の成分バランスが崩れることで連作障害になる場合もあります。
プランターの土の処分方法
土の処分方法は、住んでいる町の自治体によって処理の仕方が異なります。燃えるゴミとして少しづつ袋に入れて出しても良い自治体や、全く受け付けてくれない自治体もあります。
まずは、住んでいる町の自治体へ問い合わせてみましょう。自治体で回収していない場合は、ゴミ収集会社や民間の不用品回収業者でも土を引き取ってくれる場合があるので、調べてみてください。
また、ホームセンターで土を購入した場合、不要になった土を回収してくれるところもあります。土を購入したレシートを保管しておき、ホームセンターへ確認しましょう。
プランターの土を庭にまく
庭がある場合は、不要になった土を庭にまいてしまうこともできます。しかし、庭で植物を育てている場合は、土が病気になっていないか、害虫が発生していないか確認する必要があります。
放置されたままのプランターの土を再生する
古い土の使いまわしや処分は、問題が多いように感じますが、実はひと手間加えるだけで簡単に再利用できるんです。それは、太陽熱を利用して土を消毒する方法です。
この方法は、センチュウ類やネキリムシ、ほうれん草のイチョウ病などのウイルス病以外の病気と害虫に効果を発揮します。
[準備するもの]
- ビニールシート
- ふるい
- スコップ
- 園芸用トレー、洗面器
[手順]
- 再生するプランターの下に、ビニールシートを敷きます。
- プランターから土を出して、トレーの上でふるいにかけて、ゴミや根っこなどを取り除きます。
- 分けた土に米ぬかや油かすを10%(土に対して)ほど加えて、ビニール袋に入れ、水を加えます。
- 日当たりの良い場所に、1〜2カ月の間放置。
放置した後は、育てる植物に合わせた有機物や肥料を加えて使用します。育てる植物によって好ましい土の酸度も変わるので注意してください。
酸度計やph測定キットを使って酸度を測定して、石灰などでphを調整してから植物を育てましょう。しかし、病気になった植物が植えてあった土は、再利用せずに処分するのがおすすめです。
土の再生に低濃度エタノールを使う
低濃度エタノールを使った消毒方法もあります。太陽熱を利用した消毒方法では、米ぬかや油かすなどの固形のものを使っていましたが、こちらは低濃度エタノールという液体を使った方法です。
この方法は土をふるいにかける必要がないというメリットがあります。
[手順]
- プランターに入った土の表面に、1%の低濃度エタノールを染み込ませます。
- 土に密着するように透明のフィルムを被せます。
- 2〜3週間放置。
しかし、太陽熱の消毒方法と同様に夏の暑い時期でないと効果が薄れてしまいます。
冬場にプランターの土を消毒する方法
先ほど紹介した再生方法は、太陽熱を利用した消毒方法でしたが、冬場では気温低いのであまり効果がありません。しかし、消毒する方法がないわけではありません。それでは冬場でもできる消毒方法を見てみましょう。
プランターの土を熱湯で消毒する
太陽熱を利用した消毒方法では、太陽光を使って土の温度を上げる方法でした。熱湯を利用した消毒方法では、熱湯を使い土の温度を60度くらいまで高め、害虫や病原菌を消滅させていきます。
[準備するもの]
- 厚めのポリ袋
- リサイクル材
- 温度計
[手順]
- 太陽熱を利用した消毒法で紹介した手順の2までを行います。
- 厚めのポリ袋を二重にしたものを2つ用意し、土と鉢底石をそれぞれ分けて入れます。
- 熱湯を用意し、ポリ袋に入れた土全体にかけ、袋の口をしっかりと結びます。
- 鉢底石にも同じように熱湯をかけ、袋の口をしっかりと結びます。
- 温度計があれば、土の温度がだいたい60度まで上昇しているか確認してください。
- 手で触れるくらいの温度に下がったら、土のリサイクル材を加えて袋ごとよく振って混ぜ合わせます。
熱湯で消毒した後は、使用するリサイクル剤にもよりますが、肥料を加えてから使いましょう。
土の再生に石灰チッ素を使う
石灰チッ素を使った消毒方法です。石灰チッ素には、土の中で成分が分解され、センチュウ類や雑草、根こぶ病の原因菌などの駆除に効果があります。
さらに、完全に分解された石灰チッ素は土の中で、無害なカルシウムとチッ素が残り肥料として補給されます。しかし、石灰チッ素は肥料でもあり農薬でもあるので、取り扱いには十分注意が必要です。
[取り扱うときの注意点]
- 散布時には直接触れることのないよう、長袖、長ズボン、帽子、マスク、ゴム手袋、ゴーグルを着用しましょう。
- 薬剤を吸い込まないために、風の強い日は散布するのをやめましょう。
- 薬剤に含まれている成分がアルコールに反応して、悪酔いをすることがあります。散布した日は、お酒は飲まないでください。
- 必ず一定期間放置してください。春から秋は5〜7日、冬は1カ月程たってから栽培をはじめてください。
プランターの土に土壌消毒剤を使う
太陽熱で消毒する方法や、熱湯で消毒する方法は、環境的にも経済的にもおすすめの方法です。しかし、どうしてもこれらの方法が使えない場合には、土壌消毒剤を使った方法もあります。
土壌消毒剤には、病原菌や害虫の種類に合わせてさまざまな種類があります。土壌消毒剤の特徴としては、扱いやすく、一度にたくさんの面積の土の病害虫を消毒することができることです。
しかし、環境や人体への懸念が残ります。使用する際は、必ず農協や農業資材店へ相談してから購入してください。
再生させたプランターの土での連作障害を防ぐ方法
どんなに古い土をうまく再生させたとしても、連作障害の可能性は残ります。連作障害を防ぐためのポイントは、「科」を意識することです。
同じ科の植物は、かかりやすい病気や狙被害を受けやすい害虫が似ているため、「科」を意識して育てる順番を変えるだけで簡単に連作障害を防ぐことができます。特に連作障害に気をつけたい野菜は、「ナス科」、「ウリ科」、「アブラナ科」、「マメ科」です。
なかには、連作障害をほとんどおこさない野菜もあるので、上手に栽培して連作障害をおこさないように育てる順番を調整していきましょう。
まとめ
今回は、プランターの土を捨てずに消毒し、再生する方法を紹介してきました。土を処分するのも一苦労だということがわかりましたね。
しかし、土を捨てずに再利用したほうが、環境にも経済的にも優しいですよね。
太陽熱を利用することで簡単に土を消毒できます。太陽熱を最大限に活かせるのは、7月〜8月です。
春野菜の収穫後に太陽熱で土を再生するといったサイクルを作っておくと、秋冬野菜を植えるときにまた同じ土が使えます。
消毒しただけではうまく植物は育たないので、有機物や肥料を加えることを忘れないでくださいね。