世界中で古くから薬用や料理の風味づけに利用されてきたニンニク。疲労回復や滋養強壮に効果があって、さまざまな料理に活用されている香味野菜ですね。
- 「家庭菜園を始めたばかりだけど、ニンニクって育てられるの?」
- 「ニンニクはどのように育つかな?」
という疑問はこの記事を読めば必ず解決します。
ニンニクの育て方を家庭菜園初心者の人にもわかりやすく、庭の菜園や市民農園で年間30種類以上の野菜を育てている筆者が解説していきましょう。
家庭菜園でニンニクを育ててみたいと考えている人は、ぜひ最後まで読んでくださいね。
家庭菜園初心者におすすめのニンニクの品種
ニンニクはヒガンバナ科ネギ属の多年草です。原産地は西アジアの地中海沿岸だとされています。
紀元前4500年頃には古代エジプトで栽培されていたという記録が残っています。ピラミッドの内部の壁画にニンニクを食べる労働者が描かれているのは驚きですね。
ニンニクを家庭菜園で育てるポイントの一つに品種選びがあります。
ニンニクの種類は大きく「暖地向け」「寒冷地向け」に分類されているのが特徴です。
そのため、北海道や東北などの寒冷地の家庭菜園では寒冷地向け品種を、関東や関西より西の地方では暖地向けの品種を選ぶようにしましょう。
家庭菜園のある場所の気候に合った品種を選ばないと上手く育ってくれない可能性があります。
寒冷地向けの主な品種
- ホワイト6片
- 富良野
- 北海道在来
暖地向けの主な品種
- 平戸ニンニク
- 上海早生
- 島ニンニク
それぞれの品種の特徴をご紹介しましょう。
寒冷地向け品種
ホワイト6片
国産のニンニクで一番多く栽培されている品種です。原産は青森県福地村。外側の皮も中の鱗片も真っ白なのが特徴なので、ホワイトという名前がつけられました。名前に6片とありますが、栽培してみると6片前後の鱗片に育ちます。身近でも手に入りやすい、家庭菜園初心者向けの品種といえるでしょう。一つ一つの片が大きくて風味のバランスがよく、香りが強すぎないオールマイティなニンニクです。
富良野
北海道富良野地方で主に栽培されているニンニクの品種です。ホワイト6片と同じように外側は真っ白でとてもよく似ているように見えます。ホワイト6片より少し小ぶりですが、味が濃厚で甘みも感じられます。加熱したときのホクホクした食感が特徴のニンニクです。
北海道在来
北海道で古くから育てられてきた在来品種です。厳しい自然環境の中で栽培されてきた歴史から、生育力が旺盛かつ栄養価が高い品種になっています。ニンニクの滋養強壮成分である「アリシン」が一般的な品種より多く含まれていることが特徴です。そのため、ニンニク特有の香りが強くしっかりとした辛味も好まれます。
暖地向け品種
平戸ニンニク
暖地向けの品種は寒冷地向け品種と比較すると少し小ぶりなものが多いです。その中で、平戸ニンニクは大きい球に育てやすい生育力旺盛な品種です。鱗片は8~9片程度。香りや風味が優しく使いやすいニンニクです。
上海早生
主に九州や四国で栽培されているニンニクの品種です。一般的なニンニクよりも早く収穫時期がやってくるのが特徴です。鱗片は12片ほどに分かれるため、一粒の大きさは寒冷地向け品種と比べると小さくなります。この品種も香りや風味がマイルドでニンニクが苦手な人でも食べやすいです。
島ニンニク
沖縄で古くから育てられてきた品種です。見た目は球も鱗片も小さいのですが、風味と香りがとても強くピリッと辛いのが特徴です。
ニンニクの育て方スケジュール
家庭菜園でのニンニクの育て方のスケジュールは、寒冷地と暖地で異なります。
寒冷地7月下旬~8月上旬 暖地7月
寒冷地9~10月 暖地10~11月
寒冷地4月、5月 暖地3月、4月
寒冷地6月下旬~7月上旬 暖地5月下旬~6月中旬
このように、越冬期間は作業がないため、家庭菜園初心者でもチャレンジしやすい野菜といえます。
ニンニクを育てるために必要な準備
ニンニクの品種や特徴がわかったら、次はいよいよ家庭菜園の準備に取りかかりましょう!
野菜栽培はまず土作りから。そしてニンニクを家庭菜園で栽培するときに必要なアイテムについて解説していきます。
ニンニクの栽培に適した土づくり
ニンニクを育てるのに適した土とは、栽培期間中にほどよく湿り気を保てる土です。また、通気性も必要なので畑や庭の家庭菜園では深さ20cm以上を目安にしっかりと耕しておきましょう。植え付けの3週間前に堆肥、2週間前に苦土石灰を入れます。酸性度はpH5.5~6.0が適しています。
プランターでニンニクを栽培する場合は、野菜用の培養土で問題ありませんが、水はけがよい土を選ぶようにしましょう。
ニンニク栽培に必要なアイテム
家庭菜園でニンニクを育てるときに必要なアイテムをまとめてみました。
- ニンニクの種球
- 用土
- マルチングシート
- 肥料
- クワとスコップ
- 園芸用ハサミ
- ※深さ25cm以上のプランター
- ※鉢底ネットと鉢底石
(※畑や庭での栽培では必要ありません。)
ニンニクを育てる手順
ニンニクを育てる準備が整ったら、家庭菜園で作業を始めましょう。
ニンニクの種球を準備しよう
ニンニクの種球は表皮を剥がして鱗片ごとにばらします。1片を包んでいる薄い皮はむかずにそのままにしておきましょう。
よく観察して形が良く大きい鱗片を選び、黒っぽくなっているものや小さいもの、しなびているものは避けます。
ニンニクの植え付け
鱗片は植え付ける前に一晩水につけておくと発芽がそろいます。
畑や庭に地植えする場合は、株の間は15cm、深さ10cmの場所に植え付けましょう。
マルチシートをあらかじめ敷いておくと雑草防止と地面の乾燥を防げます。
プランター菜園では
- プランターに鉢底ネットを敷く
- 鉢底石を敷く
- 用土をプランターの上端から3cm程度まで入れる
- 深さ3~5cmの穴を開ける
- ニンニクのとがったほうを上にして植え付ける
畑や庭、プランターとも植え付けたニンニクの上にやさしく土をかぶせて、しっかりと水やりをします。
ニンニクの芽かき
ニンニクの草丈が10~15cmに育ったら、1片から出ている芽を見てみましょう。もし2つ以上の芽が出ていた場合は、小さいほうの芽を根元から取り除きます。
この作業をニンニクの芽かきといいます。残したいほうの芽の根元を手で押さえて小さい芽を引き抜くだけで簡単にできる作業です。
追肥のタイミング
秋に植え付けたニンニクには、収穫までに2回追肥を行います。1回目は植え付けてから1ヶ月後。2回目は冬越しした後の2月~3月に与えましょう。
ニンニクの追肥におすすめの肥料は、ボカシ肥料や鶏ふんです。リン酸成分を多く含んでいて即効性がある鶏ふんはニンニクを大きく育ててくれる肥料です。畑での家庭菜園ではぜひ取り入れてみてくださいね。
プランター菜園では鶏ふんのニオイが気になり使いづらいかもしれません。
ニンニク栽培で注意したい病害虫
ニンニクの栽培で注意したい病気は春腐病、モザイク病などです。
春腐病(はるぐされびょう)
春の長雨などで水たまりが多くできるとかかりやすくなる病気です。症状としては葉が黄色くなって腐敗臭がします。窒素成分が多い肥料を与えすぎた場合にもかかりやすい病気です。
モザイク病
アブラムシが媒介するウイルス病の一種です。葉に濃淡のモザイクや黄色の斑が見られて生育が遅くなります。アブラムシの早期発見と駆除がモザイク病感染を防ぐ一番の対策です。
ニンニクの主な害虫としては、アザミウマとアブラムシが挙げられます。
アザミウマ
ネギや玉ねぎなどにも被害を与える害虫です。収穫後の保管中にも発生することがあります。早期に発見すれば、農薬を使用しなくてもテープなどで取り除くことができます。
アブラムシ
ニンニクの葉に黒い虫を見つけたら、ほとんどの場合アブラムシです。アブラムシの早期発見のコツは、葉の先端ではなく根元をよく観察することです。数が増えると葉先まで大量に発生してしまいます。ウイルス病を伝染させる元にもなるため、見つけ次第取り除きましょう。
花芽かき
4~5月になるとニンニクが「とう立ち」します。「とう」とは花が咲く茎のことです。「とう」が伸びてくることを「とう立ち」と呼びます。
そのまま放置しておくと、花を咲かせるために栄養分が花芽に集中してしまいます。そのため、ニンニクの育ちが悪くなり大きくなりません。
とう立ちした花芽を見つけたら、その茎の根元から清潔なハサミでカットしましょう。摘み取った花芽は「ニンニクの芽」としておいしく料理していただくのがおすすめです。
ニンニクの収穫
いよいよニンニクの収穫です。収穫時期は、寒冷地では6月下旬~7月上旬、暖地では5月下旬~6月中旬ごろです。
暑い季節が近づいてくると、ニンニクの地上の茎や葉が枯れ始めます。地下のニンニクが大きくなり過ぎると割れてしまうので、タイミングを見て晴れて乾燥した日に収穫しましょう。収穫は株元を手で握って引き抜きます。
収穫した後は2~3日は畑や軒下で土つきのまま乾燥させます。
ニンニクの貯蔵方法
冬を越してようやく収穫したニンニクは貯蔵して年中使いたいですね。
収穫して天日で乾燥させたニンニクは、葉と根を切り落とします。2~3こずつひもで束ねて風通しがよく雨や直射日光が当たらない場所に吊るしておくと、長期保存できます。
2週間ほど干していても乾燥しきらないニンニクは、収穫時期が早すぎた可能性があります。その場合は常温での長期保存は難しいので、早めに食べきるのがおすすめです。
プランター菜園などで育てたニンニクは、貯蔵する場所を確保するのが難しいですね。そんなときは、スライスして冷凍保存してみましょう。収穫したてのニンニクの香りを閉じ込めて、一年中料理に使えます。
家庭菜園でニンニクを育ててみよう!
いつも身近にある香味野菜、ニンニクの家庭菜園での育て方をご紹介してきました。
他の葉物野菜と少し育て方がちがうニンニクは、冬の間の作業はほとんどないのが特徴です。
夏野菜の収穫が終わった畑やプランターの家庭菜園で、ぜひニンニクを育ててみてください。