万願寺唐辛子は、基本的には辛くない「甘トウガラシ」に分類されます。しかし、辛くないと思って食べてみると実は辛かったなんてことはよくある話ですよね。
そんな万願寺唐辛子が辛くなる理由は、実は栽培方法にあるのです。栽培方法に気を付けることで、辛くせずに収穫することができます。
辛くなる理由や栽培時の注意点、適切な収穫時期などを明らかにし、辛くないおいしい万願寺唐辛子を栽培してみませんか?
万願寺唐辛子が辛くなる3つの理由
ししとうやピーマンとおなじく、「甘トウガラシ」に分類される万願寺唐辛子がなぜ辛くなってしまうことがあるのでしょうか。その理由はコチラです。
- 肥料切れ
- 水切れ
- 害虫被害
栽培の過程で上記のことが起こると万願寺唐辛子は辛い実をつけてしまうと言われています。
万願寺唐辛子がなぜ辛くなってしまうのか、辛くならないように栽培するためにはどのようなことに気を付けなくてはいけないのか、ここからさらに詳しく見ていきたいと思います。
万願寺唐辛子の適切な栽培管理
万願寺唐辛子が辛くなってしまう主な3つの理由が分かりました。ではなぜそれが起こると辛くなってしまうのか、まずは万願寺唐辛子の生育の特徴をおさえておきましょう。
万願寺唐辛子の基本情報
基本情報 | |
原産地 | 京都府舞鶴市万願寺地区 |
生育適温 | 25度~30度 |
特徴 | 多収穫 |
水やり | 水切れ注意 |
肥料 | 多肥料を好む |
種まき | 3月~5月 |
植え付け | 4月~5月 |
開花 | 5月~9月 |
収穫 | 6月~10月(開花から約30日ほど) |
万願寺唐辛子は、京都府舞鶴市万願寺地区を原産とし、もともとは京都の限られた地域でのみ栽培されていたと言われています。現在は交配種として全国各地で栽培されています。
特徴として、どんどん花を咲かせ実を成らせる多収穫野菜であることがあげられます。実の大きさは5cm~15cmほど。肉厚で甘みがあるだけでなく、ビタミンCやカロチン、ビタミンEなどの抗酸化作用の強い栄養素を持つ健康野菜なのです。
たくさん実を成らせるため、たくさんの養分を必要とします。水分や肥料を切れさせないことが万願寺唐辛子の栽培のコツだということはこの特徴からも想像できますね!
①肥料切れ
万願寺唐辛子は、開花を迎えると次々と花を咲かせ実を成らせていきます。絶え間なく次々に成る実を収穫せずに放置していると、どんどん大きな実へと成長していきます。
同時に、養分を多く吸い取るため次第に株そのものがおとろえていってしまうのです。そうなってしまうと、辛い実がなり始めてしまいます。
そのため、実を適切なタイミングで収穫することに加えて、肥料を切らさずに株に栄養を与えて育てていくことが大切になります。
追肥のタイミング
開花を合図に、剪定や収穫のタイミングに合わせて2週間に1回を目安に株もとに追肥していきましょう。株を丁寧に育てていくためには肥料を切らさないことがポイントです。
②水切れ
肥料入れとともに気を付けなければいけないのが水切れです。万願寺唐辛子の根は比較的浅く、乾燥に弱い植物です。
畝間が常に湿っているように管理するのが望ましいです。定期的な水やりを心がけましょう!
③害虫被害
万願寺唐辛子は害虫被害のストレスによっても辛い実がなってしまう可能性があります。開花がはじまるころ、害虫がついていないかチェックが必要です。
除草などの環境整備やハウストンネルの設置など、できる対策をしておきましょう。
注意すべき害虫
万願寺唐辛子につきやすい以下の害虫に気を付けましょう。
アブラムシ
ナス科の天敵とされるアブラムシ。体長2~4mmと小さい虫で、柔らかい新芽などに集まり、植物の汁を吸います。すず病やモザイク病といったウイルスを媒介する厄介な虫。
カメムシ
とげのような口針を育った作物に刺し吸汁をします。
ヨトウムシ
葉裏に産卵し、幼虫化したヨトウムシが葉っぱを食い荒らします。日中は土の中にいて、夜間に活動するので防除しづらい特徴があります。
害虫対策
害虫対策には次のようなことが大切です。
ハウストンネルの設置
苗を植えたらすぐにトンネルを設置し、防虫ネットをかけます。防虫ネットは背丈が高くなりぶつかってしまう前に外します。
こまめな除草
特にカメムシは雑草が生い茂る場所を好んで生息しています。こまめに除草することで対策になります。
葉裏のチェック
アブラムシは葉裏に集まっていることが多いです。定期的にチェックをして見つけたらその都度駆除していきます。
防除剤
被害がひどい場合には防除剤の散布も検討しましょう。万願寺唐辛子の栽培時には「ぺ二カ水溶液」がおすすめです。手軽にホームセンターで購入可能です。
無農薬の場合
無農薬で栽培をしている場合は、牛乳や木竹酢のスプレー散布したり、銀色のマルチやキラキラテープを張って対策することができます。葉っぱや茎についているのを見つけた際にはその都度ガムテープで捕っていくことも大切です。
万願寺唐辛子は、肥料切れや水切れ、害虫被害といったストレスがかかることによって辛い実をつけてしまうことが分かりました。
辛くなるのは決して病気ではなく、「異常事態が起こっている!」というサインなのですね!
万願寺唐辛子の収穫時期はいつまで?
万願寺唐辛子が辛くなる理由に大きく関わるのが「収穫」です。たくさん実がなる分、適切なタイミングで収穫を進めていかないと余計に養分が吸い取られ、株が衰えていってしまいます。
万願寺唐辛子は、6月ごろから10月中旬ごろまで長い間収穫を楽しむことができます。甘くおいしい万願寺唐辛子の収穫を楽しむために、時期を見極めて収穫していきましょう!
万願寺唐辛子の収穫時期
開花から30日ほどで初めての収穫を迎えることになります。6月から10月ごろまでの長い時期の収穫を楽しむことができます!!
「できるだけ大きく育てて…」という気持ちは分かりますが、そこはぐっと気持ちを抑えて株を大切に育てていく意味でも早めの収穫を心がけましょう。
具体的には、実が10cm~12cmほどに育ったらはさみを使って収穫していきます。はじめのうちはもう少し小さいタイミングで収穫してもいいでしょう。
秋が近づくにつれて株も少しづつ衰えていくので辛い実がなりがちになるので注意が必要です。
万願寺唐辛子が黒くなる「黒あざ果」
万願寺唐辛子を栽培していると黒く変色してしまう現象が見られます。これを「黒あざ果」とも呼びます。病気かなと不安になるかもしれませんが、これは植物色素のアントシアニンの発生によるものです。
原因
原因は次の通りです。
- 急な寒さに当たる。
- 紫外線が強く当たる。
- 極端な肥料切れや水切れ。
- 収穫遅れ。
対策
- 水やりをこまめに行う。
- マルチングをして株もとを湿った状態に保持する。
- 追肥を徹底する。
- 高温乾燥対策として黒寒冷紗を張って日よけする。
大きくならない?原因は?
たくさん実を成らせると思って期待したのに、なかなか実がならない、実がなっても大きくならないと悩んでいる人も多いようです。
その原因はやはり「肥料切れ」。ナスが肥料食いなんて言われるように、万願寺唐辛子も同じナス科。
肥料切れが起きて時間がたってしまうと、復活するまで時間がかかってしまいます。肥料と水、ここは鉄則ですね!
連作障害
万願寺唐辛子は連作障害が起きやすいナス科の植物です。同じ土でナス科を連作してしまうと土の中の微生物のバランスが偏ってしまいます。バランスが崩れることで悪い微生物が増加し、病原菌の発生につながってしまいます。
結果的に作物が育たない土になってしまうので注意が必要です。最低でも3年は間隔をあけて栽培するのがいいとされています。
コンパニオンプランツ
万願寺唐辛子を上手に栽培するためにコンパニオンプランツも知っておくことは大切です。万願寺唐辛子はナス科の植物なので、ナス科同士の栽培は避けたほうがいいです。
混植に適している植物
- 枝豆
- ネギ類
- ほうれん草
- ハーブ類と花類
前作に適している植物
- トウモロコシ
- マリーゴールド
後作に適している植物
- キャベツ
- ブロッコリー
以上、コンパニオンプランツを参考にして万願寺唐辛子を育ててみましょう。
万願寺唐辛子が辛くならない栽培管理として、水やりや追肥に加え、適切なタイミングで収穫をしていくことが大切です。また、害虫対策、適正な温度管理や日よけといった対策も同時に行いましょう。
万願寺唐辛子の種は採取できる?越冬はできる?
長い時期、収穫を楽しむことができる万願寺唐辛子。毎年種や苗を買ってくるのもいいけど、自分で種を取ったり越冬させることはできないのでしょうか。
結論は、「どちらもできる」です。その方法を簡単に解説していきます。
種を採取する
万願寺唐辛子の種の採取の方法はとても簡単です。
手順
- 実を収穫せずにそのまま熟すまで放置
- 収穫して日陰で2週間ほど追熟
- しわしわになってくるので、良く乾かしてから中をあけて種を取る。
- 種を取り出したらよく洗い、紙の上に並べて風通しのいいところで2週間ほど乾かす。
- 封筒などに乾燥材と一緒に入れて冷蔵庫や野菜室で保存
これだけです!自分で採取した種から作物を育てるのは楽しいですよ。ぜひ試してみてください!
越冬させる
花を咲かし終え、枯れた苗でも冬を越して翌年も育てたい。そう考える人も多いのではないでしょうか。
実は家庭菜園で万願寺唐辛子を育てる人の中には自宅で越冬させている人がたくさんいます。次のような点に気を付ければ越冬させることができます。
- 霜に当たらないようにする
- 風にあおられないようにする
- 20度前後の温度管理をする
- 葉や枝は切り落としておく
これらの点を考慮して屋内で発泡スチロールなどで20度前後の環境を作って保管する方法や、庭の畑でもビニールで囲いハウスのような環境を作る方法があります。
いずれにせよ温度管理がとても大事になります。しっかり管理ができれば、翌年春の日差しを浴びながら新しい枝がを伸ばしてきてくれますよ。
まとめ
万願寺唐辛子が辛くなるのは病気ではなく、水切れ、肥料切れ、害虫被害などによるストレスが主な原因でした。辛くならない栽培管理の方法として、こまめな水やりや追肥、害虫対策、そして時期を見極めた収穫作業をおこなうことです。
多収穫できる分、定期的な管理が大切ということですね。株を大切に育てれば長くおいしい万願寺唐辛子を収穫することができます。
種の採取や越冬の方法についても解説しました。これらを参考にぜひおいしい万願寺唐辛子の栽培を楽しんでみてくださいね。